C言語(C99)ではC++(C++98)の標準ライブラリのうち、当然のことながら標準Cライブラリに当たる部分しかサポートされません。一方でC++98が参照しているのはC95であり、C99で追加されたライブラリはC++98ではサポートされません。

std名前空間

C++の標準ライブラリでは、マクロや一部の例外を除き、すべての識別子がstd名前空間で定義されます。<stdio.h>のようなC言語と互換のヘッダを用いた場合でも、std名前空間で定義された識別子をusing宣言によって大域的名前空間に導入しているだけです。しかし、C言語には名前空間がありませんので、std::を付けて関数名などを指定することはできません。

多重定義の影響

absやdivのような関数は、C++では、labs, fabs, ldivのような引数の型ごとに異なる名前を持つ関数だけでなく、多重定義が行われていました。しかし、C言語にはC++のような多重定義の仕様がないため、引数の型ごとに異なる名前の関数が提供されています。

また、sinなどの数学関数は、C++では、float版、double版、long double版が多重定義されていましたが、C99では、float版として接尾辞-fが付く関数が、long double版として接尾辞-lが付く関数が定義されます。例えば、sin, sinf, sinlのようにです。

また、<tgmath.h>では、単にsinと書くだけで実引数の型に応じて、float版、double版、long double版のほか、複素数版のcsin関数等が呼び出されます。C++ほどの自由度はありませんが、これも一種の多重定義と考えることができます。

さらに、C++では数学関数が多重定義されているため、例えば引数として汎整数型の値を渡すと多重定義の解決ができませんでした。しかし、<tgmath.h>で定義された数学関数であれば、整数型の実引数を渡した場合はdouble版が選択されます。

const修飾子の扱い

strchrやmemchrのように、C++ではconst修飾子の有無によって多重定義されていた関数は、C言語ではconst修飾子付きに引数を受け取り、const修飾子無しの返却値を返します。具体的には、次のようになります。

C99で追加されたライブラリ

C++98の標準ライブラリはC95をベースにしています。しかし、C99では新たにいくつかのライブラリが追加されています。具体的には、次のヘッダとそこで宣言・定義される関数、型、マクロです。

  • <complex.h>
  • <fenv.h>
  • <inttypes.h>
  • <stdbool.h>
  • <stdint.h>
  • <tgmath.h>

また、C99のprintf系関数およびscanf系関数では、”%zu”や”%td”などの書式が追加されています。


↑ C++98プログラマーのためのC99入門